口論から始まる人格否定 毒親の狂気というストーリー

白目トモ子(筆者)
メディアの片隅で生き延びてきた物書き。小学生男児2人を育てる。目下の悩みは不登校で発達特性ありの長男の中学受験。

牛乳パックを冷蔵庫に向かって思いっきり投げつけた夫。夫からの反撃が始まりました。夫の反撃にはストーリーがありました。受験を無理強いする毒親としての私を攻撃する、という。それに対して私も最も効果的に反撃する言葉を使います。それは夫のキャリアでした。

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双極性障害の混合状態

夫は躁うつ病です。躁うつ病は躁と鬱を繰り返す病気ですが、薬でコントロールしていると躁も鬱もあまり起きません。その代わりに上がりも下がりもしないままにイライラする「混合状態」というのが現れます。

混合状態は家族にとってはかなり厄介です。夫のように躁鬱がマイルドに現れるⅡ型の場合、躁も鬱も家族に損害を被らせるほどにはなりません。しかし混合状態はイライラの状態で、上りも下がりもしないままに行き場を失った負のエネルギーが、周りの人に向かうのです。

夫の場合は、泊りがけの出張や深夜までの接待の2~3日後にイライラが出現したりします。軽いものは数日で収まりますが、長引くこともあります。今回のように。

イライラの矛先が私へ向かう

夫のことばかり書いていますが、私にも原因があります。家庭運営に対する理想が高く、マイクロマネジメント系。ハラスメント上司になるのは完全に私の方です。看過すればよいことに目くじらを立てるのは私。そしてそれを炎上させるのが夫。

私が適応障害で体調を崩したことが追い打ちを掛けました。寝込み、仕事を休み、何もできなくなった私。夫は私が放棄した部分の家事をすべて引き受け、家を回していました。疲れと、吐き出し口のない負のエネルギーを溜めながら。

私にも原因があることを理解しながらも、私が今現在夫を許す気持ちになれないのが、夫のイライラの吐き出し方が、明らかに私を「傷つけること」を意図するようになってきていたからでした。

結婚当初から、夫の感情の不安定さはありました。でもその頃の現れ方はずっとシンプルでした。病的にイライラしてしまって、まともに話もできなくて、傘で地面をたたきながらウロウロと歩き回る彼の後ろをずっとついて行ったある日。電車にも乗ったりしながら2時間ほど動き回ったたでしょうか。黙ってついて行っていた私を振り返り「ごめん、イライラしてた」と。それで終わり。

衝動的にイライラして家を出ていくことがあっても、数時間のクールダウンを経て帰ってくることができました。始めの頃はイライラは常に彼の内面の問題としてのみ存在していて、2人の問題として現れてくることはありませんでした。

口論からはじまる人格否定

結婚し、子どもが生まれるにつれて、様子が変わってきました。家庭の中で役割を負い、お互いに期待し求めるものも変わってきました。その中で夫は私を「良い母であるかどうか」という部分からジャッジするようになります。

「トモ子は子供を産むべきじゃなかった」「子どものことなんて興味ないんでしょ」

子煩悩な夫。夫と比べたら子育てには淡白な私。怒りで爆発するたび、夫は私がいかに子供に関心が薄いか、責め立てるようになりました。そして爆発が収まった後には「あれは本心ではなかった」と謝る。そしてまた次の爆発で似たようなことを口走る。そしてまた謝る。

そもそも爆発が始まるのは、今回の「子どもの忘れ物」のような些細なことなのに、夫は攻撃によって留飲を下げるために何か気にくわないものを探し、気が付くと矛先が私の人格否定に向かっていました。

夫の爆発は病気によって起こるしょうがないもので、口走っていることはただのマグマ。本心ではない。私も以前はそう思っていましたが、何度も繰り返すうちにそうも思えなくなってきたのでした。

「受験を無理強いする毒親」というストーリー

夏休みに長男の精神不調がさく裂し、私が倒れた頃。それでも私は長男の勉強を何とかつなげるために、家庭学習に方針を切り替え、問題集を買いあさりました。長男の特性でも理解しやすそうな構成のものを2日がかりで探して、いつでも親塾に切り替えられる体制を築いたのです。

それに対して夫は「会社休んでやってんのは結局それかよ」と吐き捨てました。

家庭学習をスムーズにするために夜は規則正しい生活をしたかった私。夫の判断でテレビを見せたことに苦情を言うと、「あなたは子供が好きなことを知っていますか?」と皮肉を込めて聞かれました。

子どもの笑顔が見たい。笑顔にさせてあげたい。楽しませてあげたい。そうアプローチする夫と、子どもに最善の環境を与えたい。最も子どもを伸ばす環境に導いてあげたい。そうアプローチする私。二人の距離が開いてきました。その中で、夫は私をまるで「毒親」であるかのように扱うようになります。

夫を最も傷つけるキャリア否定

「望んでもいないのに無理やりやらせる」「サピックスにしがみついて子どものことなんて考えもしない」。夏休みに長男が一切サピックスに通えなくなった時、それでも何とか追いつけるようサポートした私に、夫は冷ややかでした。それらの結果として私が適応障害を発症したのは、これまでブログに書いてきたとおりです。

すれ違いの中、私は私で、最も効果的に夫を傷つける言葉を使うようになります。夫の年収と、これまで築いてきたキャリアについて。あなたは母としての私の適性を疑うけれども、あなたの導きで子どもは一体何を成し遂げらるのか? あなたは「努力」について、いったい何を知っているのか、と。 

そして今回も。私は確か言いました。「あなた程度の成果でいいとは、私は思っていないのだ」。そして夫は爆発しました。

トモ子

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