「トモ子も頑張ったもんね」 離婚するとの娘の言葉に母は何を思ったか

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

「落ち着きましたか」

翌朝、母からLINEが入りました。

今回の喧嘩のさいちゅに母に電話をしたのは夫でした。家を出ようとする私ともみあいになりながら、「トモ子がおかしい。何とか話してくれないか」と。「今は落ち着いて話せない。あとで電話する」。私は即座に電話を奪い取り、状況はほぼ説明しないまま、すぐに電話を切りました。

すっかり忘れていた。ずっと心配していたんだろう。

結婚直後、最初に夫と大喧嘩をしたとき、私は1週間ほど実家に帰りました。長男が生まれた後に夫が暴れて家をぐしゃぐしゃにしたとき、泣きながら電話したのも母でした。すぐに電車で駆けつけて、一緒に片づけてくれた母。その一件の後、母はずっと続けていた薬剤師の仕事をやめました。「心配で仕事なんかできなくなったんだよ」。数年後、母の口からききました。

申し訳ない。こんなことに巻き込んで。母に対して思うと同時に、夫への怒りがふつふつと湧いてきます。すぐに人を巻き込みやがって。ふざけんじゃねえよ。

今日起きた怒涛の出来事。そのすべてを母は知りません。夫に110番通報されたことも、警察署での事情聴取も。母が知っているのは私と夫が何かで口論をしていて、私がその電話を即座に切ったというその時点まで。

「喧嘩、どうなった? ちゃんと仲直りしてる?」。多分母のノリはその程度。心配と、でもきっといつも通りだろうという楽観。

正直、伝えたくありませんでした。母との電話を切った後に、さらに大炎上して警察沙汰になったと。それで今は私はホテルで隔離していると。そんな話を娘から聞きたい母親がいるか?

「何でもないよ、大丈夫だよ。仲直りして、これから夜ご飯を食べるところ」

そんな風に言えれば、どんなに良かったか。でも「大丈夫」とはずいぶん離れた地点に来ているようでした。もう私は夫がいる家に帰るつもりはありませんでした。夫が家を出ていき、私が一人で子育てをする。夫とは離婚する。

どんなプロセスを経てその結論に至ったのかは、まだきちんと整理できてはいませんでした。夏以降、大変なことが次々に振ってくる中で、夫婦は協力し合うどころかお互いになじり罵り合うような関係になっていた。私が心を病んでも、夫からは一言も体調を気遣う言葉がなかった。長男への学習サポートに対して夫が向けた冷ややかな目線。そんな小さなことが積み重なってきた結末に起きたのが、今回の警察沙汰でした。

「大丈夫だよ」とは言えないよなあ。

もしも。数日のプチ家出の後に家に帰るのであれば、「とりあえず、大丈夫」とお茶を濁す方法もあったのかもしれない。でもその時点の私にはもう「夫と共に暮らす」選択肢はありませんでした。「警察に行きゃいいんだろ」と目を血走らせて追いかけてきたあの顔。もし元の暮らしに戻ったら、きっと、今回以上にひどいことがまた起こる。

であれば、ある程度は正直に話すしかありません。正直に話す。覚悟を決めて返信を打ちます。

結局夫が自ら警察を呼んで、警察署で事情聴取されて、今日は夫婦隔離で私はビジネスホテルに泊まることになったこと。喧嘩の原因。夫からの連絡では都合がいいことしか言わないので取り合わないでほしいこと。気持ちとしては、離婚に向けて動きたいと思っていること。

一気に文面を作り、投げやりな気持ちで送信。ベッドに携帯を投げつけて倒れこみ、天井を見上げます。

母からはすぐに返信がきました。画面にあったのは「そっか…」という短い一言。それから1時間後。「トモ子も頑張ったもんね」。追加でもう一言、送られてきました。

母はこの1時間の間に、どれだけのことを思ったのだろう。家に帰りなさいとも、もう少し話し合いなさいとも言わず、詳しい説明も求めない短く重い返信でした。

母の心を思います。

母は、母自身が両親の激しい喧嘩を見て育った機能不全家族のサバイバーでした。両親(私にとっての祖父母)は離婚。母の姉とは絶縁。空中分解した母の家族。でも母は、両親のために墓を買いました。

「もう死んだんだから、私の好きにさせてもらう」。そして、離婚した両親を仲良く同じ墓に納めた。死んで骨になってやっと一緒になった両親を持つ母は、一体誰の立場で、私の話を聞いたんだろう。親が離婚する子どもの立場でか。離婚当事者の夫婦の立場でか。離婚しようとする娘の親の立場でか。

トモ子

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