夫婦喧嘩を動画で撮影 許しあえず加速する嫌がらせ

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

私の台詞に怒った夫が取り出したのはスマホでした。動画のスイッチを押して私にレンズを向け、「もう一度言ってみろよ」と夫。収束の方向を失った喧嘩が、炎上していきます。

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数年分のLINEを見返して

夫婦げんかについて冷静に書くのは難しいですね。どうしても自分の主観が入るし、相手が悪いと言いたくなる。おそらく私にも悪い部分が沢山あり、お互いにいることで悪い部分が増幅してしまう、そんな夫婦だったのだろうと思っています。

この記事を書くまでに、何度も過去数年分の夫とのLINEを読み返しました。自身の手帳や日記、アルバム等も見返しました。そのどこにも、もう、希望はありませんでした。数多く残された楽しいキャンプのスナップに挟まれるように、喧嘩腰の速射砲。私が怒り、夫が謝る。そしてそのしばらく後には、また夫の炎上。続ければ続けるほど破綻していった私たちの履歴がそこにありました。

特に5月以降の記録には、限界の淵に立つ親子と夫婦の姿しかありませんでした。長男が叫んでる。何かを壊した。言葉が通じない。会議に出られない。仕事にならない。何とかして。もうこの子の面倒は見きれない。助けて。

長男との関係の中で追い詰められた私は夫に助けを求め、助けが十分ではないと怒り、私が怒ることが長男をまた追い詰め、夫は私が怒るせいで長男を追い詰めているのだと私に怒る。長男の不調に端を発した家族の危機に家族が団結することはかなわず、むしろ崩壊を加速させたのでした。

私の撮影を始めた夫

場面を戻します。

私が夫に「あなた程度の成果でいいとは、私は思っていないのだ」と言った後、夫は私の撮影を始めました。「もう一度その台詞を言ってみろ。何かあった時の証拠にしてやる」と言いながら。

カメラが回っている間は私は何も言いません。そしてカメラを切ったらまた一言。そんな風にしてその日の喧嘩はとどまることなく炎上し、あまりの炎上っぷりに鎮火をあきらめた私は、簡単に荷物をまとめて家を出ました。いや、正確には家を逃げ出しました。

夫は追いかけてきて叫んでいました。「行くなよ」「警察に行きゃいいんだろ」「警察に行ってやるよ」。無視。私は駅への道をひた走りました。追いすがってくる夫には「触るんじゃない」とけん制し、つかもうとする手を振り払って。

途中であきらめたのか、夫はどこかに姿を消し、私は周囲を警戒しながら電車に乗り、尾行を警戒してわざと下車を繰り返しながら、電車の中で予約を取ったビジネスホテルへ向かったのでした。

離婚の証拠として

夫婦げんかでの動画撮影。最初にこの技を繰り出したのは私でした。2018年。喧嘩の原因は夫がろれつが回らない程飲んで帰ってきたことでした。

お酒が好きな夫はどれだけ言っても、お酒をやめられませんでした。双極性障害の薬の効きも悪くなり、飲み会の数日後には必ず気分が荒れて家族が巻き込まれるので「出来る限り飲まない」「飲むなら最小限に」と伝え続けたのですがやめない。やめられない。

その日も定石通り喧嘩が炎上。身の危険を感じた私が、家の外に逃げようとしたのを引きずり戻されるという事態にまで発展しました。

とっさにスマホを取り出して撮影したのは証拠を残すため。動画には、力づくで抑え込まれたことに抗議する私の声と、それに反論する夫の姿が収められています。そして「この動画は離婚のための証拠だ」と言い放った私に怒った夫が、また力づくでスマホを奪い取り、ブラックアウトしたところで動画は終わります。

威嚇のためのツールと化したスマホ

私が「正当防衛」のつもりでカメラを持ちだしたのは2回。数はそれほど多くはありませんでしたが、やがて夫が私を撮影するようになりました。夫が撮影をする理由は「自分が撮影をされたのが嫌だったから」。最初は私が始めた撮影は、いつの間にか相手に嫌な思いをさせるため、威嚇のためのツールとして使われるようになってしまっていたのでした。

もちろん、話し合いをしたこともありました。相手にスマホを向けてしまったら、建設的な話し合いにはなりません。長男の大変な状況に対応するためには、いがみ合ってもしょうがない。撮影NGという約束を交わしたこともありました。

しかし、一度「相手を威嚇するため、嫌がらせのために撮影する」という技を知った夫は、それを捨てることができませんでした。そして私も、過去の喧嘩の動画を消さずに残し続けました。

もしも一度徹底的に話し合い、すべての喧嘩を清算して許しあい、ゼロ、あるいはマイナスからやり直していればよかったのでしょうか。私はそれができませんでした。私は表面的には過去の様々な出来事を忘れたようで、今か今かと「その時」を待っていたのでした。

私の言動ににじみ出る憎しみ。夫にはそれが伝わっていたのだと思います。夫が撮影したかったのは、私の憎しみそのものだったのかもしれない。でも私は夫が私にあいも変わらずスマホを向けることに、心底失望し、約束を守れない夫を軽蔑しました。私が家を出たのは、何を話しても無駄だと、これまで喧嘩の数以上に重ねてきた話し合いが、すべて無駄だったのだと、悟ったからでした。

トモ子

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