小4太郎の精神不調で児童精神科に通院しています。本来の症状を見極めるための断薬を決意するも時遅し。太郎はすでに薬を飲んでしまっており、いったいどんな症状が出るか、ハラハラしながら翌日を迎えます。
この連載は、長男の一つ目の精神病院の受診から、次の大学病院に転院する前までの記録です。
高IQギフテッドの児童は、周囲とのギャップ周囲になじめず、心身に不調をきたし、時に障害状態になることがあると指摘されています。長男もそうでした。10歳で強まった不安感や学校への忌避感、ひどい癇癪、そして希死念慮。突然の不調に、何が悪いのかもわからず、ただひたすら治療を求めて右往左往していました。
一つ目の精神科では発達検査を受けられず、「トゥレット」「ASD」「ADHD」といった枠組みの中で長男を捉えようとしていました。転院後にようやく発達検査を受け、高IQであることが判明。IQが高すぎる子どもは小学校になじめず、無理に適応しようとして心身に負担がかかり、かえって不調をきたす「過剰適応」に陥ることがあると知り、ようやく長男の状態を理解できるようになりました。
また、薬が非常に効きやすく、少量で意図しない効果が出てしまう体質であることもわかりました。症状の一部は、小6の5月から小児科で処方され服用していた向精神薬「エビリファイ」の副作用だったかもしれないと思い至り、薬や対応を変えたことで、状態も徐々に落ち着いていきました。
この連載を書いていた頃はまだ私に高IQについての理解がなく、今見返すと見立てや対応が正しくない部分もあります。ただ、あの頃の混乱や葛藤の記録として、当時書いた内容で残しています。
児童精神科で二回目の診察、リスパダールが追加
前回のエントリーで、エビリファイを飲んだ翌日に幻覚症状が強まったことを書きました。これまでの幻覚は薬の副作用だったのではないかと考え、断薬を決意したのでした。

時間が前後するのですが、この日は日中に二回目の精神科通院を終えたばかり。まだ副作用の可能性にまで思いが至っていなかった私は、主治医に妄想症状の悪化を訴え、統合失調症薬であるリスパダールが追加になっていました。
タイミングが悪いことに、断薬を決意したのは薬が追加された日の夜21時ごろ。寝る準備をしていた太郎はまさに直前に薬を飲んだところでした。それまで飲んでいた「インチュニブ」に加え、追加された「リスパダール」の二種類。「うわぁ…」と思うも時すでに遅し。断薬は翌日に持ち越しとなったのでした。
地下鉄車内・ホームで走り出す
そして迎えた翌日。朝の状態は悪くはありませんでした。「学校の友達と会いたい」としきりに言う太郎の要望で、幼馴染と遊ぶ約束を取り付け。二人で図書館に行くなどして、午前中は久々の友達との時間を楽しみました。
そして午後。だんだん様子がおかしくなり始めます。いつも通りサピックスに向かう地下鉄の中。突然席から立ち上がり、連結部を越えて隣の車両まで走り出す太郎。ホームでも落ち着かない様子でグルグルグルグル…。
異常な様子さは昼食のために飲食店に入った時も続きました。席に着くとナプキンをちぎって机の上に字を書き始めました。書いた字は「カス」「ゴミ」。そして「もう僕を捨ててください」とつぶやき続け、机の下に潜り込んでしまう。
目は完全に座っていて感情が全く宿っていませんでした。「席にちゃんと座って」と話しかけてもトロンとしていて、表情にも動きにも一切、太郎の意識が見えないような。挙句の果てには席に横になってしまい、サピックスには行けないと判断。抱きかかえるようにして家に連れて帰りました。
取りつかれたように「遊園地行きたい」

やっとたどり着いた家で、一瞬太郎は落ち着きました。たくさんの人に囲まれていつも以上に緊張したのかな、と思ったのもつかの間、またせわしなく動き始めます。
ソファーの上でジャンプを続け、しばらくするとタブレットで何やら検索を始めました。そして、唐突に「遊園地に行きたい」と言い出したのです。
かつてない大癇癪・大パニック
遊園地は数日前にも連れて行ったばかりでした。

その時のことを思い出したのか…希望の行き先は「東京ドーム」。でもそう言われても、簡単には「行こう」とは言えません。薬の作用で明らかに異常な太郎の様子。つい先日同じ場所で1万円つかったばかりでもあります。次男には内緒で行ったという事情もあり、「次は家族で」「9月に」という約束もしていました。
「今日はさすがにやめておこう」
そう言うと一瞬太郎は納得するのですが、またしばらくすると「行きたい」という思いで頭がいっぱいに。「行けない」という現実を受け止め、上手に諦めることが全くできないのです。
そのまましばらく独り言で「行きたい」「いやだめだ」と繰り返していたのですが、次第にコントロールが崩壊。「それなら死ぬ」と言い出し、包丁を取りに台所へ。もみあいになり床に組み伏せる形になるも、今度は抵抗して、隙あらば自分の目に指を突っ込み、爪をはがそうと暴れます。
精神科主治医に電話つながらず
しばらく抱きかかえたまま落ち着くのを待って、「これは緊急事態」と認識を改め、主治医に電話。でも主治医は不在で、「別の医者から折り返す」とのことで電話待ち。数十分後に電話が来るも医師ではなく受付からで「距離を置いて、刺激しないように見守って。薬はそのまま飲んで」との伝言を伝えられただけでした。
絶望。
明らかに薬で悪くなっているし、手を離したら刃物で何をするか分からないような子どもを、「離れて見守れ」と?
その間も太郎はずっと「行きたいよ、行きたいよ」と泣き続けています。時々時間を確認しては「もう遅い」「今からじゃ5時に間に合わない」「もう今日は行けないんだ」と叫びながら。
やぶれかぶれで「いいよ、行こう」
私は一体どうすれば良いのか? どうしたら収まるのか? もうどうにでもなれ、という思いで思わず言いました。「もう、いいや。遊園地行こう」
正常な判断ができていたか? と問われると、そうではなかったと思います。そんな状態で外に出すべきではないし、ましてや遊園地なんて。今思うとそうなのですが、床に落ちている紙ですら取ろうとして、「紙で首を切ってやる」とうめき続ける子どもを前に、「とにかくこの状態を止めたい」という一心で。
「もういいよ、今から行こう」
そう言うと、太郎はぱあっと顔を輝かせました。「本当に?」
欲望がコントロール不能
インチュニブを飲み始めて1週間が過ぎたころから、太郎のモノへの強いこだわり・要求はおかしいほどにエスカレートしていました。
夢で見たという理由で「モモンガ」を飼いたくなったり。3万円もするジオラマのセットが欲しくなったり。その欲しがり方が尋常じゃない。「飼えない」と言っているのに、モモンガを飼うために必要なものを調べ続け、ペットショップで必要な雑貨の下調べをして。
明らかに病的で、欲望を制御する頭の中のどこかの回路が、完全にショートしているような状態。もし仮に大人だったら、万引きや窃盗などの犯罪を犯してしまうような。
この間、「したいことを全部しよう」と徹底的によりそっても見ましたが、寄り添ったことで傷がいえる、というような単純なものではないことは次第に分かってきました。次から次に湧いて出る欲求にはまったく脈絡がなく、でも執着の度合いは明らかに常軌を逸している。そんな太郎に振り回され、私自身も正常な判断ができなくなっていました。
そして再度、遊園地へ
葛藤を抱えながら再度、遊園地へ向かいました。遊園地へ行くと決まった後の太郎は「さっきまでのは噓だったの?」と問い詰めたくなるほど正常でした。まっすぐ歩くし、目つきも足取りもしっかりしている。

脳内で何が起きているのかは分かりませんが、欲望が叶わないことへの「イライラ」が彼の異常行動を引き起こしているのだとすれば、それを叶えたことで何らかの脳内物質が放たれ、感情のバランスが整ったということなのか。
遊園地での彼はややテンションが高すぎる以外はいたって正常で、なんとか、楽しい時間を、過ごしたのでした。
22時まで遊び倒して23時過ぎに帰宅。その日の行動を通し、明らかに薬のせいで異常を来していると確信を深め、薬を飲ませずに寝かせて断薬に突入。「何とか変化が現れてくれ」と祈るような気持ちで、私も眠りにつきました。
※あくまで個人の体験談です。断薬を勧める投稿ではありません。異常がある場合は主治医に相談してください。

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