精神科通院⑪ 転院を決意「紹介状を下さい」

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

幻覚など精神的な不調が噴出した太郎を精神科にかからせて3週間。ひょんなことから薬の副作用を疑い、自己判断で断薬。幻覚・希死念慮が消失し、本来の困りごとが見えてきました。そうすると悩ましいのが通院先。幻覚が主症状ではないとすると、本来の疾患であるトゥレット症候群に詳しい医師にかかりたい。悩みながら、主治医に転院の意向を伝えたところ…。(これまでの経緯は以下のバナーから)

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「こんな状態で行動療法なんか無理」

いきなり今回のハイライトですが、ガツンと言われました。「こんな状態で別の病院に行ったって行動療法なんか無理」と。不機嫌前面。ここまでは穏やかで紳士的な主治医でしたが、明らかにイラついています。

何を言ってしまったかって? 言葉を選び「大変申し訳ないのですが」と前置きをつけながらも、ストレートに言いました。「ほかの病院にかかりたいので、紹介状を書いてください」

ただ「トゥレットに詳しい医師にかかりたい」と言うと、言外に「トゥレットに詳しくないですよね?」と伝えてしまうことになるかと考え、「トゥレットの行動療法が受けられたり、家族会があったりと手厚いので」という言い方でオブラートに包んで。

それが悪かったのか? 「こんな状態で行動療法なんか無理」とかなり強い口調で要求を跳ね返されたのです。

トゥレット症候群とは

目をギュッとつぶったり、腕が勝手に動いたりする運動チックと、勝手に声や言葉が出る音声チックが継続して出る病気。10歳~12歳で症状が悪化すると言われており、太郎はまさに10歳で症状が悪化し始めました。

医師からすれば困った患者

医師が言うことも分かります。診察室に座る太郎は明らかに多動で饒舌で、生活に支障をきたしているADHD児。部屋を勝手に出ていく、席に座ってられない、質問に答えない、会話が成立しない。

それにも関わらずその親は自己判断で投薬を中断。幻覚は薬の副作用だったと思い込みで主張し、まだ症状の全容もつかめていないのに、「紹介状を書け」と迫ってきています。

「もう少し症状が落ち着くまでここで見た方が良いと思います。紹介状が必要になったら書きますが、それは今ではないのでは」

主治医は紹介状を書く意思は示しながらも、すぐに書くことは拒否。治療続行を提案されたのです。

どうしても紹介状が欲しい

「書かないものは書かない」。その決意を読み取った私は、それ以上は要求せずその日は診察終了。でも困りました。やはり太郎にはトゥレットに詳しい医師が必要だと思う。それも、何千人も見てきたような。

確かに太郎は現状、トゥレット症候群の主症状であるチックは目立ちません。これまで音声チックが出ることがあっても軽微で、教室でも我慢できる程度。どちらかというと併発症である強迫症状や多動・衝動性の方が問題で、主治医としてはそちらの対応が先、というのも分かります。

チャンスは一度でも増やしたい

でも、太郎のチックが軽いのかというと必ずしもそうではなさそうです。例えば側弯。太郎の背骨は軽度ではありますが左右のゆがみがあり、それはトゥレットの子に見られる状態です。症状には出ていないものの、彼の脳内ではトゥレット的な不具合が起きていて、それが静かに体を蝕んでいそうだというのがまずは一点。

また、これまでに投薬されたエビリファイ、インチュニブはトゥレットやトゥレット併発のADHDによく処方される薬ですが、量が多すぎたのか太郎には副作用の方が強く出た印象。トゥレットが今後数年は悪くなることが予測される中、投薬には繊細な調整が必要になりそうで、臨床経験が豊富な医師にかかりたいというのが二点目です。

そして最後の一点。トゥレット症候群の第一人者が東大病院にいて、次の予約受付日が来週。問い合わせて確認した様子だと、電話すらつながらない激戦となる模様で、チャンスは1度でも増やしたい。その激戦を制したとしても初診は10月。その予約日を逃すと次は1カ月後、受診は11月とどんどん遠のきます。

患者としての倫理か、子どもの治療か

患者としての倫理観にのっとれば、ここではあきらめるしかありません。紹介状がなければ東大病院にはかかれないので。でも、何とかできないか。ささやき声が聞こえます。「紹介状さえあれば良いんだったら、別の病院に頼めば?」

どうしよう。そんなことしたら、もう、ぐしゃぐしゃです。

紹介状を書いてくれそうな医師はいます。最初に寝つきの悪さを相談し、エビリファイを処方してくれた小児科。その後はとにかく精神科へという一心で病院を探したため、小児科への通院は中断。

でも改めてその小児科に行き、トゥレットの本格的な治療のために大学病院に行きたいと言えば、おそらく紹介状は書いてくれます。

でも…小さな嘘をあちこちでつかなければなりません。良心が痛みます。

「ちゃんと病院を選べば良かった」

じゃあ…3歳の時にかかっていたトゥレット専門医にかかるか? でも東大病院の診療の手厚さは非常に魅力的です。ペアレントトレーニングなど親向けの支援も手厚く、そこにかかることができたら、私たちには救いになりそうです。

「もっと最初からちゃんと病院を選んでおけば良かった…」

3歳の時に専門医にかかっておきながら忙しさから通院をやめ、安易に小児科で投薬を受け、迷走しながら精神科へかかり、治療を中断…という、多くは親の怠慢と判断ミスでここまで来ている。何より自分を呪います。

「こんな状態」との言葉が刺さった

精神病院から帰宅中の車内。涙が次から次にこぼれます。どうしたの? 大丈夫? 長男が心配そうに顔を覗いてきます。

大丈夫だよ。でも、悲しいね。

悲しいの? どうしたの?

なんで悲しいんだろうね…。紹介状が欲しいと言うのが重荷で、朝から緊張していたというのはひとつありそう。でも、よくよく自分に問いかければ、紹介状がもらえなかったことではなく、主治医が放った「こんな状態」という言葉の方が深く刺さっていることに気が付きます。

「こんな状態で行ったって行動療法なんか無理」。困っている私たちに向けて放たれた「こんな状態」という台詞。「今の状態のままではとても辛そうなので」など言い方ひとつ工夫できないのか。

太郎が最大級のパニックを起こして「もう死ぬ」と騒ぎ、必死で床に組み伏せていた時に、電話がつながらなかったことも思い出します。そして、私が一度電話していることが主治医に伝わっていなさそうなことも。

次、行こう

「なんだよこの病院」

せっかく予約が取れ、さらに予約が繰り上がり、太郎は良くなると思ったのに。初診からまだわずか3週間、むしろ最も困難な時間を過ごし、さらには病院に深く失望している。

分かってる。悪いのは病院ではない。悪いのは私だ。最悪期は脱したし、私が不安がってまた迷走を重ねるのではなく、いったんはここに任せて、検査や治療を受けるのも手だ。でも。

この病院で治療を続けたら、トゥレットへの理解がないが故に不要な投薬を受けないか。無意味な回り道を重ねるのではないか。この3週間には意味があったのか。もうこんなの、やめたい。

様々な思いが頭を巡り、泣きながら帰宅。家に帰る頃には心は固まっていました。

「もういいや。次、行こう。とりあえず紹介状だけもらってから、考えよう」。小児科の診察券だけ取りに家に上がり、そのまま、小児科に向かったのでした。

トモ子

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