暫定的第一志望校へ 朝の動きをリハーサル 本番まで49日

白目トモ子(筆者)
メディアの片隅で生き延びてきた物書き。小学生男児2人を育てる。目下の悩みは不登校で発達特性ありの長男の中学受験。
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12月14日

7:00

土曜日の午前中を使って、入試当日の朝の動きの予行演習をしている。今日は暫定的第一志望校へ。往生際の悪い長男は、まだそこを受けるか決めていないという態度を貫いている。

途中でコメダ珈琲店に立ち寄りモーニング。長男は朝起きてすぐには朝食を食べられないため、一旦家を出てしまう流れで計画しており、これも本番の朝を想定した動きだ。ここまでは順調。調べた通り、朝7時には開店しているし、その時間から満席ということもなさそうだ。

「でもま、2月1日にここに来るかわからないしね」。コメダに到着したことで、すっかり私は任務を完了した気分になり、コーヒーを啜っていた。そんな私に、長男が声をかけた。

「学校行かないの?」

意外だった。学校に行くのも嫌がるかと思っていた。

「行く? ここで勉強して帰れば良くない?」 私の発言に、長男は少し驚いたような顔で返してきた。

「行かないなら、何のために来たの。僕は行きたいよ。」

確かに、これではただコメダのモーニングをしに来ただけだ。とはいえ、学校に向かうだけというのも芸がないので、私は教材をたっぷり持ってきていた。

「ま、学校は塾に行く前に寄れればいいから。とりあえず先に勉強しよう。」

店を変えてランチを済ませ、ようやく「お待ちかね」の学校へ向かう。長男の「行きたい」という言葉が頭に残っていた。私が思っている以上に、その学校に受けに行くイメージを固めているのか?

学校に着くと、既に土曜の午前授業が終わったようで、駅に向かう生徒の姿がちらほら見える。下校中の在校生とすれ違いながら学校の前に到着すると、長男が校舎を見上げて口にした。

「良いことは、良いんだよなあ。」

住宅展示場を見て回る時の感覚に似ているな、と思う。明らかに手が届かない高スペックな物件に心を奪われつつも、それが自分にふさわしい場所ではないと、「これは見物用」「こっちが本命」と、どこかで線を引いている。

前日21:00(回想)

長男の今の課題は自信のなさだと思い至り、自信を持たせる方法を考えていた。その中で、昨日の夜の会話を思い出した。机の上に広げられた授業内テストの解答用紙。上部に書かれたクラス名が、私の認識しているクラスよりも一つ下だった。なんと「α」から落ちているではないか。

「あれ? クラス落ちた?」 確かめると、長男は「そうだよ。連絡行かないんだね」と眉を寄せた。どうやら、聞かれなければ言わないつもりだったようだ。

長男が早口で続ける。「でも大丈夫だよ。そのクラス、今日だけだから。来週火曜日からまたクラス変わるでしょ。この前のマンスリーの結果で。それでまた上がるから大丈夫」。

——ん? そうだったっけ?

この前のマンスリーは国語をキャンセルしたから、総合得点が出ていない。だからクラス昇降の対象外のはずだ。

「テストはキャンセルしたから、クラスは変わらないんじゃない?」

実は国語をキャンセルしなくてもαに残れる成績は取れていたのだが、中座した時間の長かった国語を採点対象外にしてもらった。結果的に、守りに徹した我々の選択は、賭けに敗れる形となった。

「あ……そうか。クラスが変わらないってことは、このままなのか。」

「いいじゃん。また上げればいいよ。」

軽く返す私に、長男は肩を落としながら、小さい声で言った。

「無理だよ。僕が平常点(授業内テストの点数)取れないの知ってるでしょ? いくらαじゃないって言ったって、あのクラスで1番にはなれないよ。」

そうなのだ。長男はテスト本番と授業中でのパフォーマンスに大きな差がある。模試の成績が上がっても、授業内テストの点数は一向に伸びず、失点のほとんどは防げるような単純なミスだった。

「でも大丈夫。」長男が、曇った私の顔を見て慰めるように言った。「本番では降臨するから。」

出た。「降臨」頼み。とはいえ、長男なりに手応えがあるのだろう。

「もうラストスパートだし、普段から『降臨』させてほしいなあ。」

「それができるなら苦労しないって。知ってるでしょ? 僕、普段はめちゃくちゃミスするんだよ。」長男が肩をすくめながら答える。うん、確かに知ってる。

長男には「超集中モード」というものがあり、そのモードに入ると、「メタ太郎」が脳内に降臨するのだ。最近の成績向上の9割は、このメタ太郎が目覚め、設問で問われていることに正確に答えるよう、答案に書くべき内容を的確に導いてくれているおかげだ。

ただ、この期に及んでも、メタ太郎は普段どこかで眠りこけている。「メタ太郎モード」は脳に大きな負担をかける。それが一つ。そして、平常授業のような慌ただしく交換採点する場面では、気を散らされやすいメタ太郎は引っ込んでしまう。それを長男自身が把握していることに、母として少し驚いた。

「ここから先は席次が大事」と、サピックスの先生には言われていた。しかし、長男の場合、席次だけでは本番での実力を正確に測ることができない。本番さながらの緊張感がなければ、持てる能力を発揮しないのだ。でも、最後の最後に、長男が「テストで発揮できる実力」をどれだけ伸ばせているのか、確かめる機会がほしい。

1月に実施される栄東の入試なら、点数や順位が明確に開示される。そこでの結果を見れば、第一志望への可能性を判断する材料になるかもしれない。上位何%に入れば第一志望に近づくのだろう。思いを巡らせながら、栄東の入試まで、既に1ヶ月を切っていることを改めて実感する。これまでと同じように時間は流れているはずなのに、妙に加速しているような気すらする。

太郎

今はだいぶ落ち着いたけど、相当山あり谷ありの2年間だったよね。

トモ子

何度も塾にも行けなくなったし、発達外来で薬ももらって、やっと調子が整ったよね。調子も成績も整ってきたのは、6年の秋だった。

 
 
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