長男のWISC-Ⅳ(IQ検査)の結果が出ました。結果は全知能IQが145と非常に高い水準。いわゆるギフテッド(IQ130以上)の基準を軽く超える結果でした。しかし各項目のばらつきが大きく、そのばらつきが彼の学習を難しくしているようです。今回は彼のケアレスミスが起きる理由を、IQテストの結果から考えてみたいと思います。
WISC-Ⅳ(IQ検査)の結果
WISC-Ⅳの結果は以下のようになりました。
- 全検査IQ 145(上位0.1%)
- 言語理解 143(上位0.2%)
- 知覚推理 134(上位1%)
- ワーキングメモリー 144(上位0.2%)
- 処理速度 115(上位16%)
非常に高い水準でした。割合で言うと全検査IQの145は上位0.1%。下位項目はそれぞれ上位0.2%~16%に位置するスコアです。ただ、4つの指標の間に大きな差がみられるため、全検査IQの値のみで長男の知的能力は判断できないとのことです。
得意と不得意
得意な力は「言語理解」と「ワーキングメモリー」。「言語理解」は言葉を使って理解し、表現する力。確かに長男は口が達者で、見聞きしたことをぺらぺらとよくしゃべります。また、人を論破するのも得意で、過去の発言までさかのぼって矛盾を探し出してきて論破するなど、親からすると「反抗的」に見えることもしばしばあります。これは「言語理解」が非常に高いが故の行動だと言えそうです。
「ワーキングメモリー」は聞いた情報を記憶に一時的にとどめ、その情報を処理する力です。例えば数字の羅列を聞かされ、それを逆に言うなどの課題をこなします。「一時的にとどめる」というのは、本人の感覚でいうと「頭の中に書く」。長男曰く、頭の中にメモパッドがあって、ある程度自由に書いたり並べ替えたりの操作ができるそうです。確かに算数の簡単な問題は暗算してしまいます。途中式は最低限しか書きません。それはワーキングメモリーが高いことと関連していそうです。
一方の不得意は「処理速度」。こちらは単純な視覚情報を素早く正確に、順序良く処理したり識別したりする能力です。彼の能力の中では相対的に低いですが、平均(100)と比べると高い116というスコア。これは社会で困るような数字ではないが、本人の他の能力との乖離があることから、「不得意・苦手」あるいはもっと強く「苦痛」と感じられる作業となるようです。
処理速度が高い場合、公文やドリルのような繰り返しの単純作業を難なくハイスピードでこなせるようです。一方で処理速度が低い場合、より多くの知的な努力が必要となるため、精神的に疲れやすいそうです。
ワーキングメモリー凸-処理速度凹の場合、こんなミスや癖が出る?
そしてここからが本題。長男の知的な特徴が分かったので、この結果を意識しながら常日頃の長男の行動(特に勉強する様子)を観察してみました。その結果、彼の脳内で起きている出来事が少しだけ分かったような気がしています。
ドリル(基礎トレ)を嫌がる
長男はドリルを非常に嫌がります。その嫌がり方が半端なく、泣き叫び逃げまどうほど。始めてしまえば10分程度で終わらせられる課題に着手するまでに、1時間以上も泣いているということもザラでした。
これは処理速度が相対的に低く、他の知的な作業をする場合と比べ、より知的な負荷がかかるためです。彼の場合はワーキングメモリーと処理速度の差が29ありますので、単純な繰り返しが多い勉強は大変苦痛なようでした。
算数の計算問題にケアレスミスが多い
これはドリルを嫌がる部分ともつながってくるのですが、計算問題が嫌いなだけではなく、ミスが多いのも特徴です。中でも、2つの処理をしていて、1つめの処理を「覚えておかなければいけない」ような計算でミスが出ます。
例えば、15.66÷2.36という計算があったとします。ひっ算するときは、位取りをふたつずらして1566÷236として商を求め、余りがある場合には位取りを戻します。例えばですが、長男はこの「位取りを戻す」のを忘れます。
これは、処理速度の低さとも関係するのかなと見ています。頭の中だけで計算するのは得意なのですが、それを書き出すのは不得意です。そのため、ひっ算をしているとひっ算の方にばかり意識が向いてしまい、位取りを戻すことを覚えていられなくなるのです。
途中式を書かない
頭の中で比較的複雑な処理ができるので、中学受験のいわゆる1行問題は途中式を書きません。私であれば数式であれ線分図であれ、紙に書き留めて解いていく方が圧倒的に安心感があります。しかし彼の場合は頭の中で解く能力と、紙に書いて解く能力の間に乖離があるので、「書きながら解いた方が解きやすい」とは感じないのだと思います。
鉛筆を走らせず、目を泳がせて空を見ながら解く
途中式を書かないことの言い換えでもありますが、彼が問題を解くとき、鉛筆を走らせるよりは空を眺めていることが多いです。目を右に左に泳がせながら、脳内で高速処理をしています。筆記で解き切れる子と比べ、脳内処理と筆記を行き来しなければならない分、ミスのリスクが高く、疲労感も強いのではないかと感じます。
思考に邪魔される
途中式を書かないということは、すべて頭の中で完結させるということです。その時、頭の中に何か雑念が浮かぶと、それが脳内の処理を邪魔します。また、複数の数字を同時に思い浮かべていた時に、その2つの数字が入れ替わってしまうということも良くあります。
例えば、4㎥が何㎤かを求めるような問題。この場合は、1㎥=1000000㎤であるところから、4㎥=4000000㎤と求めます。彼の脳内では、1㎥=1000000㎤と4×1000000㎤が同時に浮かび、結果的に答えの欄に1000000㎤と書いてしまうことが起こります。脳内処理は直線的に処理を進めていくことは得意なのですが、処理の過程で知識を引っ張り出してくるような場合、混乱が起きるようです。
条件整理が複雑な難問は得意だが、計算過程が複雑な難問は不得意
これは言語理解が凸であるのと関連する部分かと思っています。私が解けないような難問を難なく解く(それも、「超簡単だ」と言いながら)ことがある一方、少し処理が複雑な問題は簡単に投げ出す姿勢が見られます。
例えば「AさんはBさんより点数が5点高い」「BさんとCさんの合計は15点」…のような条件が複数与えられ、それらを手掛かりに正解を探すというような問題は非常に得意です。それも、頭の中で全部解きます。
一方で、少し複雑な数列の問題で3段階4段階に分けた処理が必要な問題は解けません。これはおそらくドリルが苦手なのと同じ理由です。頭をひねる要素よりも手を動かして処理する要素が増えるほど、苦手感が強まるようです。
時間に追われると作業が雑になりミスが増える
処理速度が弱い子どもの特徴として、時間に追われるとミスが増えることがあるそうです。この点については長男も自覚があります。算数で制限時間の5分前になると、焦って頭が空回りし、何も解けなくなるそうです。
特に算数のように、頭の中で何かを記憶しながら筆記で計算を解いていくような作業は、長男にはかなり負荷のかかる作業です。時間に追われるとこういった高負荷の作業がうまくできなくなるようです。社会のように記憶している情報を取り出して解答すればいい科目では、あまり焦りによるミスは起こりません。
高IQ児童の「あるある」困り感
鉛筆を持って字を書く速度の遅さと、脳内での処理速度の速さが釣り合わず、プリントでの学習にストレスを感じていた。
暗算できるのに式や筆算を書かされたり、理解していることでも板書や書き取りでやたらと量を書かせるのが苦痛でならない。
文章を書くのを嫌がるので書字障害かと思ったが、頭の中で書く文章の進みが早すぎて、書字が追い付かないから書くのが大変で嫌とのこと。
反復学習が大変苦手。漢字の練習(同じ字を何度も練習すること)や同じパターンの計算問題が大量にある算数プリントが苦手。苦手と言う範疇を超え、ひどく嫌がり、叫び、ストレスから吃音の心身症状も出る。
処理速度凹の学習面での困りごとを検索する中で上記の文科省の資料をみつけました。資料中で紹介されている当事者のエピソードが長男にも良くあてはまり、高IQあるあるの困り感なのだなと改めて感じています。
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