自信の喪失 第一志望「やっぱり受けない」 本番まで38日

白目トモ子(筆者)
メディアの片隅で生き延びてきた物書き。小学生男児2人を育てる。目下の悩みは不登校で発達特性ありの長男の中学受験。
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12月25日

21:00

その決意はどれほど固いのか?

「僕、やっぱり第一志望の学校受けないよ」

長男が言ったのは、冬季講習の初日を終えた後、夕食後に教材を一緒に確認しているときだった。本日取り組んだ問題の点数は決して目を見張るものではないが、学校別コースを切り替えた直後の「大惨事」から比べれば、十分に「健闘」と言える数字だった。「悪くないじゃん」と、その感触を伝えた直後のことだった。

「僕、受けないよ」

あまりにもさらっと放たれたその言葉に、思わず耳を疑った。「受けない」? 思わず何度か聞き返してしまった。

「えっ? 受けないの?」「ごめん、今、受けないって言った?」

私が聞き返すたびに、長男はますます身を縮めた。その仕草からは、私の問いかけが「責め」として伝わってしまっているのだと感じた。私は冷静に聞いたつもりだったが、どうやらその受け止め方は違ったらしい。

「そうか、決めたんだね。……ちなみに、なんで?」

できるだけ柔らかく言葉を選んでみたものの、長男は答えず、ただ俯いたまま。

そういえば、席次が少し上がったという報告を受けたときも、長男の反応は素直ではなかった。私が思わず大袈裟に喜んだら、顔を顰めてこう言った。

「点数で一喜一憂するのは良くないよ。」

確かにその通りだ。一喜はやがて一憂に繋がる。その時は、「浮かれすぎるのはやめて」といった牽制だと思ったけれど、違ったのだろうか。もしかすると、あれは「席次が上がっても、その志望校はもう受けない」という意思表示だったのか。

「何で?」という問いには長男は答えず、その代わりに、「ごめんね」と言ったまま黙っている。

「何で謝るの? 謝らなくていいよ。」宥めるように言うと、長男はようやく次の言葉を口にした。

「がっかりしてるでしょ」

がっかりした——というよりは、「やはりそう来たか」と受け止めた、というのが正直なところだ。何となくスランプを脱したと思い込んで受けた最後の模試で叩き出した、9月以降最低水準の偏差値。その結果が、こんな形で長男の気持ちを方向づけてしまうとは思わなかった。いや、そもそも、長男の気持ちの変化が、模試の結果によって導かれたのかすら、分からない。

それにしても、ほんの少しの匙加減や手応えで、こんなにも方向が簡単に変わってしまうのか。頼りなく、不安定で、手を差し伸べたくても、自分で決めたいという意思だけは強い。その意思を尊重しようとすると、ただ成り行きを見守るしかなく、何もできない歯がゆさを噛み締める。

元の学校にどうしても行きたい、というポジティブな選択というより、「撤退」に近い感ように思えた。同じような感覚があるからこそ、彼は何度も「ごめんね」と謝るのだとも、思えた。「期待に応えられない」という申し訳なさが、言葉の端々に滲み出ているように感じられた。

この状況で、「もう少し頑張ろう」と励ますべきなのか、それとも「決断を尊重する」と100%納得して背中を押してあげるべきなのか——。そのどちらが正解なのかは全くわからない。何を言うか考えあぐねたまま、私は長男が俯くその姿を見ているだけだった。

太郎

今はだいぶ落ち着いたけど、相当山あり谷ありの2年間だったよね。

トモ子

何度も塾にも行けなくなったし、発達外来で薬ももらって、やっと調子が整ったよね。調子も成績も整ってきたのは、6年の秋だった。

 
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