「イライラ」「集中できない」鉄・亜鉛不足のせい? 本番まで48日

白目トモ子(筆者)
メディアの片隅で生き延びてきた物書き。小学生男児2人を育てる。目下の悩みは不登校で発達特性ありの長男の中学受験。
このページの内容

12月14日まで

「僕が体調悪いの、サプリ変えた後からじゃない?」


長男が眉間にしわを寄せながら、妙に鋭い指摘をしてきた。「サプリ」とは、偏食気味の長男の栄養補給を目的に、気休めで飲ませていたビタミン&ミネラルのチュアブルのことだ。偏食気味の長男の栄養を少しでも補うために、気休めのつもりで飲ませていたものだ。

確かにそう言われてみれば、ピンとくるものがある。近所の薬局で買っていたそのサプリが底をつき、再度購入しに行ったところ、取り扱いが終了していた。やむなく別の商品を選んだのだが、切り替えのタイミングと体調が悪くなり始めた時期は重なっているかもしれない。

「前飲んでたのと今飲んでるやつ、中身違うんじゃない?」

さらに追及してくる長男。この探偵ぶり、どうして普段の勉強に活かさないんだろう。しかし長男の言う通り、確かに、以前のサプリを飲み忘れると、確かに長男の情緒が微妙に乱れる気配があった。明確な変化というより、「なんか機嫌悪いな」というレベルだったが、思い返せばその多くが飲み忘れた週に起きていた。そして最近、長男は「むしゃくしゃする」と訴えている。

「成分量の比較まではしてなかったな。可能性あるね。」

以前のものと今飲んでいるもののパッケージを見比べてみる。カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛……。

「どれだろう。分からないな。でも、全体的に前のと比べて含有量が減ってるんじゃないかな。」

そういえば、発達障害と栄養バランスについての記事を以前どこかで読んだことを思い出した。その時は流し読みしただけだったが、すぐにスマホを取り出して検索する。

あった。これだ。

鉄が不足・欠乏しているだけで、いら立つ、すぐキレるなどの情緒障害になりやすく、暴力的・攻撃的になることもあります。
また、亜鉛の不足・欠乏でも気分が沈みやすくなる、集中できないなどが起きることがあります。

「鉄や亜鉛不足で癇癪、不安感、苛立ち……まるで長男のことじゃない?」 発達障害を診る病院の中には、初診時に血液検査を行うところもあるようだ。さらに調べる。

  • 鉄不足: 鉄は神経伝達物質の合成に必要で、ADHDの子どもで注意力の低下や多動性と関連
  • 亜鉛不足: 亜鉛は神経シグナルの調整に関与。ADHDやASDの子どもで血清亜鉛値が低いことが報告。注意力や行動制御に悪影響を及ぼす可能性

論文もいくつか見つかった。学業成績に影響を与えるという研究もある。一方で「補充による改善が見られなかった」というものもあり、亜鉛や鉄の欠乏と発達障害の関係は、まだ完全には解明されていないようだ。

今飲んでいるものだと、鉄は1.0mg、亜鉛は1.2mgだ。一方、以前のものだと鉄は2.5mg、亜鉛は1.5mg。亜鉛は微妙だけど、確かに鉄は減っている。1.5mg程度の差で、そんなに変化があるのだろうか。

長男の実感を確かめるため、時系列で状況を整理してみた。手元のクレジットカード履歴によると、新しいサプリメントを購入したのは11月7日。その後の流れを振り返ると、次のようになる。

11月7日

サプリメントが切れ、新しい商品に買い替える

11月10日

合格力判定SO③では過去最高偏差値をマーク

11月23日

学校別SOで撃沈

11月28日

マンスリーテストの途中でパニックに。試験中に逃げ出し、国語を科目キャンセル

12月1日

合格力判定SO④でSOの中では最低をマーク

11月10日まではギリギリ栄養が持ち、その後、徐々に鉄や亜鉛の不足が影響し始めたと考えると、妙に辻褄が合う。パニックになってテストを抜けるというのは、流石の長男にしても滅多にないことで、志望校変更による精神的な動揺だけでなく、栄養バランスの乱れが影響していたと考えれば、ここ最近の彼の不安定さに感じていた違和感も腑に落ちる。

「これまでの実感を元にすると、十分にありうるな。それが原因だとしたら、何を改善すればいいのか——」そう呟きながら、再度検索に戻る。亜鉛を多く含むのは牛赤身肉、レバー、カシューナッツ。鉄を多く含むのはレバー、牛赤身肉、マグロ、鰹。どれも「12歳の偏食男子」が喜んで食べるとは限らないラインナップだ。

「亜鉛については、ナッツなら食べそうだな。買っておこう。あと、元のサプリも。」楽天とAmazonを開き、それぞれ購入を済ませる。

——あとは、夕ご飯を牛肉メインにしてもらえばいいか。それなら偏食気味のあの子も食べられるだろうし。

12月15日

21:00

……という数日間の気付きとアクションを経て、すでに栄養改善に取り組み始めていた今日。早速、体調の変化を感じる出来事があった。いや、どこまでが生活改善の効果なのかは分からないけれど。

長男が突然、鉱物の整理整頓を始めたのだ。

「何かを片付ける」という行為は、実はメンタルが安定していないと非常に難しい——これは、夫を10年以上観察して得た私の確信でもある。夫もおそらくADHDの傾向があり、普段は脳内が混沌としている。無数のタスクが渦巻き、頭の中は散らかった引き出しのようだ。しかし時折、突然その混沌が霧散し、脳内がクリアに晴れる瞬間が訪れる。

混沌と言っても、夫は普通に仕事をしている。必要な作業スペースを脳内で何とか作り出し、その範囲内で仕事を回している。ただ、それは例えるなら、落ち葉が散らばる地面に小さな空間を確保するようなもので、風が吹けばすぐに埋もれてしまう状態。そのため、頭の中では常に落ち葉を掃き続けているような感じだ。

そんな夫が、時折「今日は片付ける」と宣言して突然整理整頓を始める時がある。それは、頭の中の落ち葉が奇跡的に吹き飛ばされ、つかの間の平穏が訪れた時だ。長男もまた、夫と同じ特性を引き継いでいるのだろう。いつもなら「あれどこ?」「これどうするの?」と、散らかした張本人が尋ねてくるのが常なのに、今日は黙々と鉱物を分類している。

あれ? とっちらかし太郎に何が起こった?

鉱物標本の整理は早々に切り上げ、風呂も夕食もスムーズにクリア。夕食後の勉強にも、文句ひとつ言わずに取り掛かり、なんと久々に美しい集中力を発揮。そして、驚くべきことにキレ散らかすことなく歯ブラシを済ませ、自分の寝室に引き上げた。これは拍手喝采ものだ。

これが本当に栄養改善の効果なのかは分からない。それでも、分からなくてもやれることはやる。食生活の見直しには、一つとして害はないので。

太郎

今はだいぶ落ち着いたけど、相当山あり谷ありの2年間だったよね。

トモ子

何度も塾にも行けなくなったし、発達外来で薬ももらって、やっと調子が整ったよね。調子も成績も整ってきたのは、6年の秋だった。

 
 
1〜10日
 

Coming soon

11〜20日
 

Coming soon

21〜31日
 

Coming soon

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