母も倒れた⑥ 窮状の訴え 反応が薄かった上司

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

精神不調の長男に寄り添いながら過ごした夏休み。私が在宅勤務で面倒をみたり、夫が連れ出したりして時間をつないでいましたが、ある日限界に達しました。太郎と散歩に出かけて帰ってきたところで力尽き、玄関に倒れこんだ私。「仕事はもう休もう」と決めて連絡のためにスマホを取り出しましたが、何をどう文章にすればよいのか…。気の重さから文章がうまく綴れません。

このページの内容

子の看護で休みにくい職場

私のワーママ生活は10年目になりますが、子供の病気で仕事休むのが苦手です。得意なんて人いないと思いますが、そこまで罪悪感を感じさせない会社も世間にはありますね。もともと有給取得率が高くて、誰かが休んでも悪目立ちしないところ。

弊社、完全に真逆。

世間向けにはご高説、しかし内実は旧態依然のマッチョ社風で、有給「何それ」の世界。もちろん人事部はそんなこと言いません。でも現場の人間は心の中で舌打ちです。特に突然の休みには。

誰もかれも健康リスクは抱えていて、特に家族のケアを担う人は負ってるリスクが何倍にもなっている。分かるけど他人事。いやでもその「他人」、隣にいます、ほらここに!

そんな中で、頭下げながら生きてきました。やりたかったマスコミの仕事です。働きにくいなと育休復帰後に早々に失望もしましたが、子どもが大きくなれば楽になると思って。

ワーママが休むだけで「また休んでる」

しかし、ママとしてのキャリアは、その期間に比例して、自信を失っていく過程でもありました。

「休むな」とか「手を抜くな」とか、面と向かって言われることは稀です(あるけど)。多いのは他のママ社員の陰口。陰口まではいかなくても、相談のふりした苦情。「彼女また休んでるの?」とか。

私の休みがそれでも少ない方だったのは、私の裏で夫が休んでいたからです。話題に出たその「彼女」の夫は、弊社でゴリゴリ働いてます。職場結婚って、女性はワンオペ直行ですけど、ところでワンオペって知ってます?

私の席のあたりをママ島なんて言われ、属性でひとくくりにされたこともありました。言った本人は笑ってる。え? 面白い? 笑うとこ? 今思うと、そんな発言は全部叩き割ってこれば良かった。でも、私はあいまいな笑みを浮かべながら「そうですね」なんて言ってました。すぐに休むママ軍団ってことですね、って内心で呟きながら。

そんな経験はキャリアの中の一断面でしかありません。でもその瞬間の記憶が心をくじくのです。その声の裏に、表立っては何も言ってこない、何十倍の声を想像しますから。それが、「マッチョ企業での子育て社員」というマイノリティが見る世界。

在宅勤務の環境格差で自信喪失

そんな環境でも頑張りましたよ、私。マミートラックだけど部長から「手放したくない」と言ってもらえる程度には。「エース」と呼ばれて謙遜しながらも、内心はハンデあるなりに成果は出してるし、私なりに戦ってると思ってました。でも、なかなか難しかったのがコロナ禍でした。

「えっ、自室で仕事してないの?」

最近、聞かれて返事に窮したと質問No.1がこれ。その人は少し先輩の男性社員で、子どもは中学生。「僕の部屋はSOHO並みに整ってて超快適」。そんな風にのたまわれました。

私はリビングで仕事です。私にとっての在宅勤務は、コロナ禍から始まった子育て両立勤務。いかに集中できる時間を細切れで捻出して、突貫作業でその日の作業量の帳尻を合わせるか。そんな力技の世界。

緊急事態宣言が解かれて学校・学童が再開しても、学童拒否を続けた長男との放課後を考えると、基本方針は変わりません。そんな私には「自室で仕事」なんて夢のまた夢。そもそも、家事育児との両立が最大の柱である私には、自室なんてものは存在しません。

ワーママの在宅勤務のクオリティは低い――。そんな風に悟られないように必死です。昔聞こえてきた「彼女また休んでるの?」って言葉が、頭の中でリフレインしています。

管理職に相談も積極的な介入なし

だけど、家庭の窮状を隠しきれなくなってきた今年の4月以降。長男は学校に行き渋り、定期的に脱走騒動、遅刻・早退での送り迎え、帰宅後は癇癪からの暴言暴行キーキー声の雨あられ。

管理職には春頃から伝えはじめていました。しかし在宅=子供の面倒見ながらの勤務可能、と思っている管理職は反応薄め。「状況は分かった。大変だったら言ってね」(大変だから言ってるんだわ)。ついでにそこに「発達障害、他にも多いよ」なんて余計な一言までついてきて。

そりゃ、これだけ発達障害の概念が広まってきた今、「他にも多い」は確かにその通りでしょうけど。各人の困りごとは千差万別で、我が家のように在宅勤務がままならない状況が不定期で発生するのであれば、どう対応していくか。それこそ、話し合うべきでした。

「他に何かある?」と聞かれた春の面談終了間際。「はい…とりあえず大丈夫です」と私は先々の不安を飲み込んでしまいました。いや、ありまくりじゃないですか? しかし長男の件は大してつっこまれず終了。

面談後もどんどんバランスを崩していった長男。在宅勤務が多めだった私は、職場に見えないところで多くの負担を吸収し、「周りと同じようにやる」と強行。そのしわ寄せを食らったのが、必死にSOS出してた長男でした。

もっとママ社員が多ければ

最終的にこんな風になるなら、もっと早い段階から減速しておけばよかった。だけど、減速するためのSOSは出していたはずだった。それが働き方に反映されなかったのは、私のコミュニケーションが悪かっただけでしょうか。

もし、もっとママが多ければ。同じ悩みでもがいたことがある人が、すぐそこにいれば。「何か困ってる? 大丈夫?」「ちょっと小耳に挟んだんだけど」そんな風に声をかけてくれる人が、1人でもいれば。そうすればきっと、「もう少し上司に掛け合った方がいいよ」「この人に話聞いてごらんよ」と適切なアドバイスが得られただろうに。

社内有数の大所帯でありながらママ社員が2人しかいない私の部署では、そんな横のつながりはありません。一つ一つの壁にぶつかるたび、自分で「これだったらできる」と業務を切り分け、個別に調整する。無理かどうかは自分だけが決める。それはそれで融通は利くのですが、本当に行き詰った時には、こんな風に一人でつぶれるんだ。私は今回、それを心底痛感しました。

teamsを立ち上げます。その管理職に8日前に送ったチャットがあります。相当に窮状を訴えた内容でした。「面談の機会を頂きたい」。私はそのチャットで要望しましたが、面談日程が即日設定されることはなく、しばらく後にある考課面談と一緒にすれば良い、と判断したようでした。

その面談があったとしても、もう手遅れだったかもしれないけれど。その感度の鈍さが、ママ社員を追い詰めているんじゃないか。そんな怒りも同時に、こみ上げてくるのでした。

トモ子

お読みいただきありがとうございました。ブログランキングに参加中です。クリックして頂けると次の記事へ励みになります。よければぽちっと…喜びます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

他のテーマで探したい

このページの内容