女だからってハラスメントに詳しい訳じゃない

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

記者でワーママです。以前「ハラスメント」についてコンパクトな解説を書く必要があり、「書いて」と指名されました。特に詳しくもなんともないのですが、詳しいよね?と言われて思い当たったのはある炎上案件での私の対応。「女性の権利を主張する」=「ハラスメントにも詳しい」ってことですか?

このページの内容

ある炎上案件で苦情相次ぐ

ちょっと前の出来事の方からご説明します。

ある大手メディアに勤めているのですが、少し前に、弊社が外部から批判されたある出来事がありました。女性を中心に不愉快な思いをした人がいて、社外の人が弊社に苦情を申し立てているような案件でした。

私はどちらかというと社外の批判に同調する考えでしたが、男性が多い職場なので現場レベルで漏れ聞こえてくる会話は「フェミが…」とか「炎上してる…」とか。変な燃料を投下したくないという忌避感が先立っていて、批判を真摯に受け止めよう、という空気ではありませんでした。

「大袈裟に騒いでる」でいいの?

そんな中ある後輩が大勢が参加しているチャットツールでも同様の発言。さすがにあきれました。あまりにも鈍感と思って。

気心知れた同僚と小声で言い合うのは、100歩譲っていいとしましょう。会社という場にはふさわしくない会話だけれど、大勢に聞こえるように言っているわけではないので。

ただチャットツールは違います。多くの人が参加していて、考えは多様です。その多様性への配慮があれば、社外の批判が極端だというような一面的な発言はできないはず。発言ににじむのは、自分が「社外の怒っている『フェミ』とは違う側」にいて、チャットにいる同僚も「自分と同じ側」で、自分の発言が「共感される」はず、という奢りです。

社内にも多様な意見・立場があることが見えていない

腹が立つと同時に、ある意味しょうがないとも思いました。発言の背景には、これまで社内でジェンダー的に多様な発言が出てきていなかったこともあるのかなと。もし社内にうるさ型の女性社員がたくさんいたら、彼もそんな発言をしないよう学んできたはず。

そういう意味で、違和感は飲み込んで波風立てず仕事してきた私にも、少なくともその環境への責任はあるし、ならば今ここで、社内にだって多様な経験の持ち主と意見があるということを示さねばと。

そんな風に思って言い返しました。

私は外部の批判はまっとうなものだと思うし、真摯に耳を傾けなくてはいけないのではないかと。何人かが私の投稿にいいねをつけてくれて、その後輩からは特に反応はありませんでした。

「ハラスメント、詳しいよね」と言われた

前段ちょっと長くなりましたけど。少し前にそんなことがあったのでした。

で、後日。「ハラスメントについてちょっとした解説を書いてくれない? 詳しいよね?」と別の先輩からチャットで頼まれました。「チャットでのやり取りを見ていてそう思った」とのこと。

はい?

ハラスメントについてチャットで言及したことはありません。思い当たるとすれば上述の、後輩の発言をたしなめた一件のみ。先輩の念頭にその一件があったとしても、社外での炎上案件とハラスメントはテーマ的にも全然違いますし、女性が関心ある話題として括るのはあまりに雑です。

関心はあるけど、当事者としてです

もしも私が記者としてハラスメント問題に取り組んでいるのだったら、まったく問題はありません。ハイ喜んで書きますとなるでしょう。

でも、先般の後輩をたしなめた発言は、記者的な関心をもってとった行動ではないわけです。女として男社会で仕事してきて、苦しさ、苦々しさを感じていたから出てきたものです。

男が支配層にいる職場の空気。そのカルチャーのために女性が感じる息苦しさみたいなもの。今思うとセクハラな案件も昔にはありました。

そんな中で十何年も仕事していると、女性の働きやすさ、女性の生きにくさについてもよく考えるようになる。長い過去があっての、当事者としての発言なわけです。

だから、私にとって「関心あるよね?」はこれまたあまりにも、ハラスメントの構造に無頓着な発言に聞こえました。

マイノリティでない人の鈍感さ

これ、自分が何かのマイノリティーになったことがないからこその、鈍感さだなと思います。

例えばですけど、自分が米国で仕事をしていて、日ごろアジア人への差別に生きにくさを抱えていたとしましょう。欧米系の同僚から「差別について詳しいよね。何か書いてよ」って言われたら「はあ?」ってなりません? すごく単純化して言うとそんな感じ。

私は普通に仕事がしたいだけで、女性の権利主張を生業にしているわけではありません。時たま、女性として主張しなくてはいけない場面があると。それは期せずして背負わされているある種の重荷みたいなもので。

それに、ハラスメントに関しては詳しくなるべきは、むしろ加害に加担してしまうかもしれない人の方であるべきで。私は関心は高いんですけど、生存戦略としての関心なので、関心の重さが違うんですよね。そしてすごく私的なもので、関心の中には怒りを含んでいる。

だから、返しました。「確かに女性の方がハラスメントを受けやすく、詳しくならざるを得ない面がある。もしそういう意図で言っているのだとしたら少し傷つく」と。即効返事がきました。「関心が高いのかと勘違いしてた。ごめん」と。

会話は先輩の謝罪で終わり、その後は普通に仕事のやりとりでした。でもまだ思うんです。この返しで良かったのかなあと。なんだか晴れない気持ちを抱えて今に至っているのでした。

トモ子

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