パパ記者の時短体験記、それってそんなにすごい話?

白目トモ子(筆者)
マスコミの片隅で息も絶え絶えの記者。週末キャンピングカー住まい。子供との野遊び、中学受験、家計簿、時短収納を記録。自身も中受経験の経験組。

Yahooに朝日新聞の男性記者が書いた育休&時短体験記が載っていました。5カ月の育休、その後には1年間の時短を取って不安だったこと、大変だったこと、素直な言葉で綴られています。まっとうな記者さんの、良い記事だと思いました。ですが、何とも言えないモヤモヤがこみ上げてきました。

このページの内容

母親が通ってきた道の追体験に過ぎない

モヤモヤの元凶はこれですね。連載の趣旨の部分に書いてありました。

父親のモヤモヤにぴんとこず、いら立つ人もいるでしょう。「父親がモヤモヤ?」と。

父親のモヤモヤは、多くの母親がこれまで直面した困難の追体験かもしれません。

まさしくそれ。父親が今通っている道は、幾多の母親がこれまで通ってきた道の、追体験に過ぎないわけです。

「夕方に退社する気まずさ」…そうでしょう。「妻の帰りが遅くなるとイライラしました」…そうですよね。

ワーママだったらみんな知ってること。朝日新聞だったら社内でもう何十人もの女性記者がその道通ったはず。日本全国だったら何百万人のワーママが、もう20年くらいそんな経験してきてるわけです。

この育休&時短体験記、何が新しいの?--単に、当事者が男性である、それだけです。これまで女性がやってきたことを男性がやったから、貴重な体験としてコンテンツになるわけです。

そんな感覚がまだまかり通っている…。働く場としてのマスコミが、これまでいかに何も変わってこなかったかを、物語っていると感じます。

正直に言えば、すごいなと思った

でも、正直に言えば「すごいな」と思いました。おそらくは夜勤もあるニュース部門の記者でしょう。育休5カ月は男性だったらなかなか取れない長さです。加えて1年の時短。「よく取ったな」。それが正直な感想。

でも、そう感じた直後に、少し「イラっ」とする。ママ記者が育児をすれば当たり前、パパ記者が育児をすれば「すごい」って、でも何それ?なんで?って。

困難は男性だけではないでしょう。産休育休で穴をあけるのは、女性にだって困難なものです。記者のような激務多忙系であれば、復帰したとしてどんな仕事ができるのか、不安だってあります。業務によってはプライドだって簡単にへし折られます。

じゃあなんで、「この男性記者すごいな」って賞賛した?なんで私今、男性側の「困難」にだけ敏感に反応した?って。

それは、私自身の中にも、ある種のバイアスがあるからです。女性の困難や葛藤は当たり前。でもそこに男性が下りてきたら、すごいなと思う。そう反射的に思ってしまう自分自身が、絶望的にまだ変わらぬ社会を映していると実感して、イライラするわけです。

マミートラックへ続く道も追体験します?

多くの働く母親は、その後の長く退屈な道もたどっています。いわゆるマミートラックと呼ばれる職場に配属されたり。昇進では当然のように別扱いを受け、キャリアは完全に打ち止め。

だからと言って、「私はもっと仕事がしたい」と大きな声を上げるか?無理でしょう。マスコミで総合職がフルスロットルで仕事をすることは、無制限の残業と同義です。働き方改革が叫ばれる今なお変わらずです。

そんな職場で「仕事がしたい」と言ったとたん、家庭が詰みます。それが分かっているから、「当面の間」仕事を棚上げします。

そして、それが何年も。第2子が生まれ、小1の壁に直面し、気がつけば10年とか経っているわけです。まさしく、今の私。

この道、通りますかね?この記者さんも。1年の時短の先に、こんな道見据えていますかね?

ー-いや、きっと見据えていないだろう、と思ってしまう。育休取得者は何人も見てきたから。まるでインターンシップのように育児に関わり、その後は「育休経験者」の看板を引っ提げて、時々セミナーに呼ばれたりしながら、仕事にまい進する男性記者。

彼らが取得する育休は確かに1か月から3カ月に、そして半年にと長くなってはいるのかもしれない。だけど、多くの人はまた元のレールに戻る。戻れる彼らと、戻れない私たちとの間には、やはり何か深く超えられない溝があるように思えてならないのです。

目指すはダディートラックからの職場改革

いや、ひょっとしたら、本気の本気の男性育休取得者が続々現れていて、彼らがマミートラックならぬダディートラックに続々はまるようになり、職場としても人繰りに本気で悩まされ、ようやく建前だけではない働き方改革に、乗り出すのでしょうか。

それが本当に起こるかどうかは、育休も時短も明けた後に、どれだけ本気で育児との関りを残し続けるか、そのために会社に働きかけ続けるか、だと思います。

今回の記事、男性が当事者であることで大手メディアのコンテンツとして成立した訳ですけれども、育児と仕事の両立にかぎって言えば、問題は性別に由来するものではなく、そもそも長時間勤務が育児と両立しないというシンプルなものです。

母親が引き受けている限りにおいては、問題化しつつも部分的な最適化にとどめることができた。男性が、特殊な一部としてではなく、男性のマジョリティーが育児の当事者として現れ、育児をする権利をちゃんと主張しかつ行使し、職場で不在になっていくことで、ようやく根本的に解決すべき問題として、俎上に乗ると思うのです。

その時、過渡期の現場にはもっと痛みが伴います。皺寄せが行く側の不満、離職。人手が足りないという空気に負けて結局時短できない事例の続出、収入、昇進格差の問題。

それが、女の問題ではなく、広く働く親世代の問題として起きてほしい。起きないで欲しいけど、起きて欲しい。なぜなら、今までの変化のスピードでは、遅すぎるから。

大事なのは、1年と5ヶ月の育休・時短を取ったその後です。どうかこの記者さんが必要な限り育児に関わり続け、変化の担い手になってくれますように。

トモ子

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